チラシ配りのおねいさん

ズラーっとお店が並ぶ通りを友達とフラフラと歩いていたら、チラシ配りのアルバイトのおねいさんが近寄ってきてチラシを差し出してきた。わたしは小さいバッグしかもっていなかったし、どうせ見ないで捨てるんだからと、適当にお辞儀をしてやり過ごした。そしたら、おねいさんは予想外の反応をした。ショックを受けたような顔をした。それも、つくりものの「残念だわあ」という顔ではなく、まるで非情な人間に蹴り飛ばされてしまった子犬のような怯えた目だった。そして、「ひぃっ」という息をすいこんだような声をだし、後ずさった。

わたしもびっくりしてしまった。チラシ配りの人に、そんな反応をされるなんて予想もしないよ。受け取るのを拒みつづけられて、疲れてしまったのかな。「あのひとならうけとってもらえそうだ」と思った人が、うけとってくれなくてショックをうけたのかな。

もしかしてあのひとは、外に出たばかりの傷つきやすいひとなのかもしれないなーと勝手におもう。でも、それを見分けることはできないし、もしできたとして、わたしはどうするんだろう。
手をさしのべて、うけとって、それを後で捨てる。それを繰り返すのかな。まあ、近寄っていって直接じっくり話してみるとかいう、思い切った行動がとれるはずのないわたしは、何かするとしても、それくらいしかしないんだろうな。

見知らぬあの人はいま、家でぐったりしてるかな。明日もまた、仕事に出かけるのかな。別に「戻ってでも、うけとればよかった」なんて反省しているわけじゃないけど、なんとなく気にはなってる。あんな反応されちゃあねえ。

明日もまた、あの通りを通る。あの人がまた、チラシを配っているのに出くわしたら、わたしはどうするんだろう。考えすぎかもしれないけど、これがチラシだけの話ではない気がしてしまって、ならない。